内科的疾患等による認知機能低下について
認知機能の低下は、様々な内科的疾患によっても引き起こされる可能性があると示されています。
栄養バランスの偏りや長期間のアルコールの過量摂取、胃がん手術後に多く見られる『ビタミンB1欠乏症』では、意識障害・眼球運動障害・運動失調を主徴とするウェルニッケ脳症を発症し、そのまま放置すると症状の回復が困難とされるコルサコフ症候群へと移行します。
コルサコフ症候群では、健忘・作話・見当識障害といった症状がみられます。
ウェルニッケ脳症は、早期にビタミンB1を補充することで経過良好と言われています。
顕性甲状腺機能低下症では、一般知能・注意・集中力・知覚機能・遂行機能・記憶・言語機能といった多くの機能が障害されます。
また、抑うつ症状との関連性を結論付ける報告が多くあります。
甲状腺自己免疫疾患に関連した脳症である橋本脳症では、意識障害・幻覚・幻視・妄想の精神神経症状・認知症・振戦・けいれん・小脳失調・ふらつきの順に症状を呈しやすいとされています。
神経梅毒によっても認知機能低下は生じます。
晩期梅毒では、慢性的な髄膜炎や脳実質への浸潤・炎症の影響により、見当識や記銘力の障害・判断力や計算力の低下・反社会的行動や異常行動・幻覚・妄想・抑うつと言った症状を呈することが知られています。
肝性脳症では、早期だと注意機能・情報処理能力・視運動強調を呈しやすいとされています。
その他では、自発性低下・動作緩慢・日中の傾眠傾向・易怒性の亢進・無関心・構成失行・パーキンソニズム・舞踏病様運動を伴うことがあり、最終的には昏睡状態にまで至ることもあるようです。
特発性正常圧水頭症では、軽症であっても精神運動速度が低下し、注意機能やワーキングメモリーが障害されやすく、記憶の自由再生や語想起にも問題が生じやすいとされています。
重症例では、全般的な認知障害や重度の運動障害が生じます。手術が行われていないケースでは、複数回認知機能検査を繰り返しても学習効果はみられず、全般的な認知障害は進行すると言われています。
投稿者
浅田 健吾先生
株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩
平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、令和元年より株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩での勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。