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PT楠貴光の臨床家ノート 肩甲骨の機能を運動学的に考える その24 棘下筋のストレッチング

肩関節の内旋運動時には、肩甲上腕関節では肩甲骨関節窩に対して上腕骨の内旋運動が生じます。

このとき、肩甲上腕関節での関節包内の転がり・滑り運動としては、肩甲骨関節窩に対して、上腕骨頭が前方に転がることに加え、後方に滑ることで、運動軸の中心を捉えることができます。

また、肩関節の内旋運動には、肩甲骨の運動を伴います。

具体的には、胸鎖関節での鎖骨の前方突出や肩鎖関節を軸とした肩甲骨の内旋運動を伴い、肩甲帯としては屈曲方向の運動が生じます。

このようにして、肩甲上腕関節と肩甲骨の運動が組み合わさることで、肩関節の内旋運動が生じることができます。

これらの肩関節の内旋運動時の関節包内運動や、肩甲上腕関節と肩甲骨運動の関係性を踏まえて、棘下筋のストレッチングについて考えてみたいと思います。

棘下筋は、肩関節の後面に位置し、肩関節の外旋作用を有する筋であることから、肩関節を内旋することで伸張負荷が加わります。

しかしながら、肩関節を単に内旋させるように誘導するだけでは、棘下筋に適切な伸張負荷が加わるとは限りません。

・棘下筋に適切に伸張負荷を加えるポイントとしては、

肩関節の内旋には肩甲骨運動を伴うことから、肩甲骨運動が生じないように、肩甲骨をしっかりと固定したうえで、肩甲骨関節窩に対して上腕骨頭を内旋方向に誘導する必要があります。

また、棘下筋の伸張性が低下している場合、肩甲上腕関節の内旋運動を誘導した際に、上腕骨頭の前方変位が生じる可能性があります。

肩甲上腕関節の内旋に伴い上腕骨頭の前方変位が生じてしまうと、棘下筋に伸張負荷がうまく加わらない場合があると考えられます。

これは、棘下筋が上腕骨頭の後面を覆うように走行している、その線維走行から想像できると思います。

そこで棘下筋に対して、適切な伸張負荷を加えるため、肩甲上腕関節の関節包内の転がり・滑り運動をしっかりと誘導します。

この肩関節内旋運動時には、前方へ転がる運動に加え、後方へ滑る方向へ誘導することで、上腕骨頭の後方を走行する棘下筋の起始部と停止部が、より遠ざかる肢位となり、適切に伸張負荷を加えることができます。

このように棘下筋に対して適切な伸張負荷を加えるためには、肩関節内旋運動の誘導方法を注意する必要があります。

これらのポイントを確認したうえで、きれいな運動を誘導できる範囲を設定することが重要であり、その運動範囲以上の誘導では代償的な運動が生じやすく、適切なストレッチングには繋がりにくいと考えられます。

 

楠 貴光先生

園部病院リハビリテーション科
神戸リハビリテーション福祉専門学校理学療法学科 臨床講師
上肢機能に関する学会・論文発表が多数
臨床と研究を組み合わせて高いリハビリテーション効果を出している若手臨床家