車いすと身体の適合で考えるべきこと
今回は、身体状況に合わない車いすを使用することによる弊害に関して、私が経験していることをご紹介したいと思います。
身体状況に合う車椅子に関しては、まずスクリーニングとして、Hoffer座位能力分類の活用をご紹介いたしました。(https://horcs.com/archives/3167)
この中でスクリーニングなので、必ずしもこの条件に当てはまらない場合もあると記載しましたが、逆にこの条件に沿った選定が行われなかったために課題が発生したということも多く経験しています。
これらが起こる理由は
①環境とのマッチングで使用すべき車いすが使用しにくいこと
②制度や経済的な理由で身体状況にあった車いすが使用しにくいこと
③援助者側の受容(ティルトリクライニングへの変更は時に重度化のイメージを抱きやすい)
が影響していると感じます。
例えば、セミモジュラー型の車いすを使われていた方が、最近食事がとりにくくなってきており、むせられる、という相談がありました。嚥下機能の評価、として介入した方でしたが、明らかにティルトリクライニング車いすが適応の方でした。嚥下機能が低下していたのは覚醒の低下があり、食べれないという状況で、離床時は血圧の低下もありました。
Hoffer座位能力分類
そのような中で姿勢変換型の車いすの使用が必要となったのですが、②と③の理由で、使用に進みませんでした。
その間もその日の調子によって食べれる食べれない(これは覚醒度によって変わっている印象)状況が続いていました。
ある時、私の評価に加えてSTの評価をいただく機会がありました、そこでも同様な評価結果となったわけですが、そこでようやく、車いすが変更になりました。
変更後、角度調整を行いながら食事を実施すると、以前あった覚醒のムラがなくなり、むせなく食べることができるようになりました。誤嚥性肺炎につながらず、食べれるようになられて本当に良かったと思います。
このほかにも、①の理由でケアマネからティルトリクライニングの車いすの変更の可能性を確認してほしいと依頼を受けたこともあります。
状態の改善に伴ってではないと様々なリスクがあり、生活が破綻する可能性があるということを説明し、変更せずに経過できたという事例もあります。
このように主に、身体状況に合わない、とはHoffer3のレベルの方が、ティルトリクライニング車いすを使用できないという状態がほとんどです。(逆の場合ももちろんあります)
その理由としては①、②、③のような理由が主ですが、私たちリハ職は、そのような時その方の生活、人生においてなぜそれが重要なのか、根拠を持って説明ができるということが必要であると思います。
波野優貴先生
理学療法士
福祉用具プランナー
シーティングコンサルタント
勤務先
◯株式会社SOMPOケアネクスト
地域包括ケア推進部生活リハビリ推進グループ
◯大阪府立大学 非常勤講師
福祉用具論の一部を担当