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PT楠貴光の臨床家ノート 肩甲骨の機能を運動学的に考える その25 上肢の運動と姿勢との関係性について(前額面)

これまでも上肢の運動時には、胸腰部の運動が生じることをお話してきました。

例えば、上肢の前方挙上動作である肩関節の屈曲運動の際には、胸腰部では伸展や非挙上側への側屈が生じます。

また、上肢の側方挙上動作である肩関節の外転運動の際には、胸腰部では非挙上側への側屈運動が生じます。

これら上肢運動時の胸腰部の運動は、肩関節や肩甲骨の運動とともに、上肢を空間上で挙上するための動作のひとつになります。

しかし、このような胸腰部の運動や姿勢変化が正常に生じない場合には、肩関節や肩甲骨運動にあらゆる影響を与える可能性があります。

そこで今回は、前額面上での体幹の傾きと上肢の運動方向について体幹が過度に左側屈位(左傾斜位)を呈し、上肢の運動時に胸腰部の運動が生じない例を挙げ、左右それぞれの上肢を空間上でまっすぐ挙上した場合、どのようなことが生じるかを考えてみます。

まず、右上肢を前方挙上した場合

右肩関節の運動としては、外転を伴った屈曲運動になります。

また、右肩甲骨も胸腰部の傾きにあわせて、空間上では上方回旋位を呈した状態となります。

この場合には、上肢は前方挙上しやすくなると予測ができます。

そのため、肩関節や肩甲骨機能に問題がある場合でも、上肢の前方挙上が獲得できていると誤った評価につながりやすいと考えられます。

 

反対に、左上肢を前方挙上した場合

左肩関節の運動としては、内転を伴った屈曲運動となります。

また、左肩甲骨も胸腰部の傾きにあわせて、空間上では下方回旋位を呈した状態となります。

この場合には、上肢を前方挙上しにくい状態となり、正常な肩関節や肩甲骨機能を有していても全可動域までの挙上が困難となります。

これらのことからも肩関節や肩甲骨機能に対して、正確な評価や動作練習をおこなうためには、姿勢と上肢の運動との関係性についても、充分に注意する必要があります。

 

楠 貴光先生

園部病院リハビリテーション科
神戸リハビリテーション福祉専門学校理学療法学科 臨床講師
上肢機能に関する学会・論文発表が多数
臨床と研究を組み合わせて高いリハビリテーション効果を出している若手臨床家