OT浅田健吾の臨床家ノート その人にとって意味ある“作業”について
前回は『作業療法士が取り扱う“作業”について』という内容でお話させて頂きましたので、その“作業”についてもう少し掘り下げてみたいと思います。
“作業”を取り扱う療法士ですから、ただ単に『ご本人が“やりたそうな事”をやってもらう』のが作業療法ではありません。
理学療法や言語聴覚療法にも様々な手技があるように、作業療法にも多くの考え方(理論)が存在し(カナダ作業遂行モデル、人間作業モデル、作業行動理論・・・等)、それらモデルによって“作業”の捉え方や視点はやや異なります。
そこで今回は、作業療法の基礎学問として位置づけられている『作業科学』をもとにお話し致します。
その人にとっての“作業”を紐解くにあたっては、その“作業”の『形態』『機能』『意味』を考えます。
『形態』(form):いつ、どこで、何を、どのように、どの程度…つまり、その作業が「何なのか?」という事。
『機能』(function):その人の生活や人生、健康、成長等に「どのように役立つか」という事。
『意味』(meaning):その人にとって、「どのような意味・価値があるか」という事。
こういった視点などを持ちながら、作業というものをとことん追求するのです。
例えば・・・
カラオケが趣味という女性。上手に歌うのは勿論のこと、メイクや服装もしっかりして、馴染みのお店でステージの上で歌いたいとします。
これは、この人にとってのカラオケという作業の『形態』になります。この方の場合は、ただ人前で歌うだけでは不十分です。
立ち振舞や見栄えにもこだわる必要があるのです。
ひょっとすると、この方にとってのカラオケは自宅での準備から既に始まっているのかもしれませんね。
この方がカラオケに取り組む為には、お店までの移動や発声などが必要ですから、それなりに身体機能への影響はあるでしょう。
人付き合いの機会にもなりますし、賞賛されると自己効力感が高まるかもしれません。
これは、この作業が持つ『機能』です。
最後に『意味』は、家事から解放されて心安らげる瞬間であったりストレス発散だったり…。
もしくは、「良い交友関係を保つ為に必要な手段」だったりする可能性もありますね。
これらは、療法士を含む他者が「きっとこうだろう」と決めつけてはいけません。
本人の主観や発言内容は勿論のこと、生活・人生の歴史といった“文脈”から紐解くという事が重要になるのです。
投稿者
浅田 健吾先生
イーリハ東大阪訪問看護ステーション
平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、平成29年より(株)コンパス イーリハ東大阪訪問看護ステーションでの勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。