PT山口剛司の臨床家ノート その15 小趾側荷重の捉え方 症例を通じて解説
前回の続きから、小趾側荷重の捉えたかたを、症例を通じてご説明します。
最近担当した患者で、内反小趾と筋委縮性のハイアーチにより、胼胝をきたしているケースがありました。
主訴が足の裏が痛くて歩けないとのこと・・・疼痛部位は、右の小趾MP関節側面と小趾内反角度が強いため、第4趾側面に陥入していく圧迫による疼痛、および小趾MP関節底部の胼胝の痛みでした。
歩行時など荷重時における、あるゆる動作で、小趾側荷重が過剰に生じており、同側スタンス期には膝内反角度が増加するパターンが認められました。小
肢以外の足趾についても荷重時は、しっかりと地面を捉えているわけではなく、浮いていたり、足趾間が密着したまま荷重に対する機能的な運動ができていない印象でした。

足底を確認してみますと、やはり小趾球に胼胝ができており、この発生要因を考えることが重要であると考えました。
要因は、2つ推測されました。
この胼胝は、基本的には小趾側荷重の強調が原因ですが、前回のコラムで述べましたように、ただ小趾側に荷重ができればよいわけではありません。
一旦は小趾側で体重を受け止めて、安定した荷重期を迎え、その後に足圧が移動するパターンが良いのです。
ここでいう安定した荷重期というのは、時間的には0.5秒未満の話です。ですから、観察時は瞬きも許せません(笑) それくらい集中しないと分析ができないものなのです。
もう一つの要因は、足底の筋肉、特にここでは小趾外転筋の萎縮による足底接地面積の縮小化です。
足部はアーチ構造は骨で判断しますが、骨の基準でアーチが見られても、足底部の軟部組織が大きければ、見た目は扁平足に見えるものです。世間では
かなり誤った見解で捉えられていることが多いようです。
この軟部組織が足部機能の低下により、萎縮してしまい、結果として踵やMP関節部が足底面へ突出するケースをしばしば経験します。
この場合は、アプローチの考え方としては、
・安定した小趾荷重機能を作り、母趾側への足圧移動を誘導する条件を整えること。
・小趾外転機能を作り内反小趾のアライメント補正および、小趾外転筋の筋量を増加。
ということになります、一つ目の荷重誘導は即時効果が期待できますが、2つ目は、小趾のアライメント補正と小趾外転筋の筋量を増やすことは中長期的な目標となります。
しかし、患者の痛みをとるには即時効果が求められますので、ここでインソールなどの補装具が登場するのです。
次回は、パッドを使ったアプローチを説明します。
執筆者
山口剛司 PT, mysole®Grand Meister

Altruist 代表
理学療法士
フットケアコンサルタント
足部・足関節の関節可動域、筋力、アライメントなどの関節機能や歩行などの動作分析を行い、個人に適したインソールを作成するという足部・足関節のスペシャリストである。