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PT波野優貴の臨床家ノート ポジショニング 30度側臥位を理解しよう

今回は体位変換などで使用されることの多い30度側臥位についてお話します。

病院、在宅様々な場所で、ご自身で臥床時の姿勢を変化させることができない方に対し、主に褥瘡や拘縮の予防といった意味合いで体位変換が行われることは多いと思います。

そしてこの時に左右の30度側臥位(半側臥位などとも呼ばれる)が選択されて、仰臥位、左右30°側臥位と3種類の体位でローテーションされることが多いと思います。

ではこの30度側臥位にはどのような意味合いがあるのでしょうか。

この姿勢にはとても重要な意味合いがあります。ただ単に仙骨の圧を除圧するためにこの姿勢が選択されているわけではありません。

ちらの図は寝ている方の骨盤を上から見た図になります。赤いものが大殿筋になりますが、30度側臥位の状況を見てみると、その大殿筋に体重がかかることがわかります。

また,この時、側臥位での褥瘡好発部位である、大転子には体重がかかりません。大殿筋で体重を受けることで仙骨、大転子両方の除圧ができることが30度側臥位の最大のメリットとなります。

このような理由で、体位変換の際には30度側臥位が選択されることが多いということになります。

しかし、ここで疑問を感じるのですが、体位変換が必要なADL全介助レベルの方々の大殿筋はこのように体重を支えることができるほどボリュームがあるでしょうか。

多くの場合、筋委縮が進み、大殿筋の厚みは感じられない状況であると考えられます。

そのような状況で、30度側臥位にしたからといって大転子と仙骨の除圧が本当にできるのか、あるいは除圧ができたとしても腸骨稜などほかの部分のリスクがあがってしまうのではないかということも考えられます。

これに対して、褥瘡予防・管理ガイドライン 第4版では、「30 度側臥位、90 度側臥位ともに行うよう勧められる。(推奨度B)」とされており、30度にこだわるというよりも、その方の状況に応じて選択すべきであるということがうかがえます。

実際、30度側臥位で寝てみるとわかりますが、しっかりとポジショニングが行われなければ体にねじれを作りやすい姿勢でもあります。

ねじれは苦痛や不快感を生じさせ、交感神経優位な状況となってしまい様々な弊害をうんでしまいます。

体位変換の姿勢を検討していく際には、30度側臥位のみにこだわることなく、個々人の状況に応じて体位を検討していく必要があります。

投稿者
波野優貴先生


理学療法士
福祉用具プランナー
シーティングコンサルタント
勤務先
◯株式会社SOMPOケアネクスト
地域包括ケア推進部生活リハビリ推進グループ
◯大阪府立大学 非常勤講師
福祉用具論の一部を担当