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認知症と他の病態を区別する方法

臨床を行う中で、「この方は認知症なのだろうか?」と判断に迷う場面は無いでしょうか?

今回は、特に対応する機会が多いと考えられるアルツハイマー型認知症(以下、AD)と他の病態を区別する方法を一部ご紹介します。 

まずは生理的健忘(加齢に伴う物忘れ)です。

この区別は、主に記銘力の質から行います。

自分の体験した出来事自体を忘れてしまうADに対し、生理的健忘では体験の一部のみを忘れてしまうことが多いようです。

また、本人に“物忘れがある”という自覚があるとともに、物忘れはありながらも見当識は保たれており、日常生活に大した影響をきたすこともほぼ無いということが生理的健忘の特徴とされています。

 次は、せん妄との区別です。

せん妄は、意識障害を伴う急性の注意の集中や維持が困難となりやすい病態とされています。

体調不良や急な環境変化で生じることが多く、入院時に生じるケースは少なくありません。

長期間持続はせず数日で落ち着くことが多いとされており認知症とは異なるものですが、その一方で認知症と合併してみられることもあります。

体調が改善した際や短期間の内に症状が落ち着いた際は、せん妄を伴っていたことが予測されます。

ただし、そのまま放置しておくと認知症の進行を誘発する可能性もあるので、状態安定のタイミングで元の生活リズムを取り戻すための援助や、本人の過ごしやすい環境調整等を行う事が大切です。

 うつ病やうつ状態では、“偽性認知症”と呼ばれる症状を伴う場合があります

偽性認知症とは、動作・思考の緩慢や集中困難によって、記憶・判断の困難さが生じている状態です。

本人はこうした状態を記憶障害と認識して周囲に訴えるため、認知症が発症したと勘違いされることもあるようです。

ADの方は病識の低さから自身の障害・症状を実際より過小評価する傾向にありますが、うつの方は実際よりも過大に障害・症状を訴える傾向にあることが特徴です。

また、抗うつ薬の効果で原因となる動作・思考の緩慢さや集中困難が改善とともに、記憶・判断を行いやすくなることも区別のポイントとなります。

統合失調症でも様々な認知機能障害を呈することがありますが、ADと違い比較的若年者で発症するケースが多いことに加え、認知機能障害自体はそれほど重篤ではないことが多いともされています。

 認知症の方は増加している一方で、「認知症だから」と一括りにして、本人にとって本当に必要な対応が取られていないケースも少なくない印象です。

専門職として細やかな対応を行うために、適切なアセスメントを心掛けたいものです。

投稿者
浅田 健吾先生
株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、令和元年より株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩での勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。