PT山口剛司の臨床家ノート その12 フォワードランジや片脚立位から、他の動作との関連性を推測する
現在までに姿勢動作観察のポイントについて、4つの項目を解説してきました。
特に単独の項目については、片脚立位とフォワードランジ動作は、とても重要な項目です。
われわれセラピスト側が観る客観的な評価の目線でいえば、どの項目にも優位性はありませんが、大切なことは、患者や選手自身に『気付かせる』ことなのです。
この気付きの観点でいうと、立位や歩行動作は、普段から既に嫌ほど実施している動作ですので、所謂当たり前の感覚ですから、例え左右に大きく動揺が見られる歩行動作でも、その方にとっては普通なわけです。
よく外来患者さまのお話で、片方の足を引きづっているのを友人に指摘された・・・とか聞いたことはないでしょうか。
まさにこの情報は、普段意識下で動作を行っているわけではない歩行動作の異常性なんて、自覚症状はまるでありません。
逆に気付いていたら、自分でそれを修正しようとします。
話は、逸れますが、運動器疾患の多くは、自分で気付くことから改善の道へと入ります。
言葉を選びませんが、努力家はやり方さえ数回お教えすれば、外来リハに通わなくても症状が緩解するケースは多くみられるものです。
つまりは、いかに気付かせるかが重要な点なのです。
そういったことを背景に、片脚立位やフォワードランジ動作など、普段あまりやらない動作をすると意外とできないなぁと思えたりします。
またアスリートは、ブタンから厳しいトレーニングを積んでいるのだから、できて当然!なんて思うかもしれませんが、全くそんなことはありません。
逆に器用なアスリートは、身体機能の低下した部分をうまくごまかして動ける場合があります。
これはこれで素晴らしい能力なのですが、やはり基本的な動作である片脚立ちやフォワードランジのような前方へ踏み込む運動は、基礎的な運動機能をスクリーニングするのに大変便利でわかりやすいツールです。
例えば、片脚立位ではこれまでのコラムで述べたように、小趾側での荷重機能が重要です。
これが安定してできなければ、サイドステップ時のブレーキングや、そこからの推進・駆動する際の母趾側荷重をうまくすることができません。
また、振り向いて後方へステップしていく際や、着地の際にも母趾側荷重ばかり動員されてしまうと返って下肢の支持性が低下してしまう原因になります。
また、逆に片脚立位が小趾側荷重が強調されている場合や、小趾側荷重を飛び越えて、回外方向への不安定性が生じている場合などは、母趾側荷重が苦手なタイプといえます。
この場合は、前方へ重心移動をすることが苦手なタイプといえますので、あらゆる動作において、地面への強い推進力・制動力を得られず、効率の悪い動作要因となります。
このように、片脚立位の動作一つでもいろんな運動との関連性を推測できるのです。
執筆者
山口剛司 PT, mysole®Grand Meister
Altruist 代表
理学療法士
フットケアコンサルタント
足部・足関節の関節可動域、筋力、アライメントなどの関節機能や歩行などの動作分析を行い、個人に適したインソールを作成するという足部・足関節のスペシャリストである。