OT浅田健吾の臨床家ノート 更衣動作について その2
上衣更衣では、袖や襟口から身体各部位を出したり抜いたりするような頭頚部・上肢の操作を行う際、体幹(脊柱)が非常に緻密に末梢測と協調した運動を行います。
例えば長い袖に上肢を通す際は遠方に上肢をリーチする必要があるため、脊柱はリーチしている上肢と同側に回旋させる必要があります。
しかしこの動きと同時に対側の上肢では衣服をリーチしている上肢と反対方向に引っ張って“張り”を作らなければなりません。
そうしないと、リーチしている上肢と衣服との間で生じる摩擦(抵抗)により、袖内で手が袖口までなかなか到達できないのです。
つまり、一方では自己身体より遠位へ向かう、もう一方では自己身体に引き寄せるといった、拮抗した動きを行っている事になります。
更衣動作を座位にて遂行する方も多いと思いますが、その自立を念頭に置いた座位評価を行うのであれば、静的座位や外的外乱に対する耐性のみでは不十分です。
上肢の自律的でダイナミックな運動を含みつつ、時には視覚情報を遮断されながらも転倒せず保持し続けられるかどうかに加え、脊柱の屈伸・回旋・側屈にどの程度の自由度があるかを確認する必要があるでしょう。
特に片麻痺を呈する方は、麻痺側上肢・肩甲帯の固定性により上部体幹の可動性が著しく損なわれているケースをよく目にしますが、座位バランス訓練により安定性限界の拡大を図る事で、努力的な動作遂行による連合反応のような脊柱関節可動域の制限因子を軽減させる事も一定可能であると考えます。
投稿者
浅田 健吾先生
イーリハ東大阪訪問看護ステーション
平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、平成29年より(株)コンパス イーリハ東大阪訪問看護ステーションでの勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。