QOLの評価尺度について
昨今、医療現場や論文において、QOL(Quality Of Life)の評価を目にする機会が増えています。
医療現場でよく用いられる健康関連QOLの評価ツールは、包括的尺度と疾患特異的尺度のそれぞれで多数存在しますが、包括的尺度の中でもEQ-5D(EuroQol 5 Dimension)について解説します。
包括的尺度とは、対象が有する疾患を評価内容に考慮しないため、様々な状態の方に使用可能であり、一般的な状態との比較も可能です。
一方で疾患特異的尺度は対象が限定される分、医療介入による反応性に優れており、固有の疾患における病状の程度を比較・分別することも可能です。
そうした包括的尺度の1つであるEQ-5Dは、1987に開発されてから多くの国で使用されており、日本語版は2001年に開発されました。
自己記入式ではありますが、質問項目は『移動の程度』『身の回りの項目』『ふだんの活動(例:仕事、勉強、家族・余暇活動)』『痛み / 不快感』『不安 / ふさぎ込み』の5つで構成されており、比較的簡便に実施可能なので、対象者の負担が少ないというメリットがあります。
各項目の回答方法は、従来版であるEQ-5D-3Lと、より感度を高めることと天井効果(回答が高得点に集中してしまうこと)の解決を目的として新たに開発されたEQ-5D-5Lの2種類が存在します。
EQ-5D-5Lは
「1.問題なし」「2.少し問題がある」「3.中程度の問題がある」「4.かなり問題がある」「5.極度の問題がある」の5段階で、
対象者の主観(自身の健康状態を表していると感じるものを選択)をもとに評価します。
厚生労働省 HPより引用
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002mpa7-att/2r9852000002mpe0.pdf
臨床や研究等で使用する場合は、使用登録(https://euroqol.org)が必要となりますが、回答結果は換算表を用いることで「完全な健康=1」「死亡=0」と基準化された健康状態のスコアの算出が可能です。
算出されたスコアは、年齢階級別の平均値と比較したり、経時的な変化の確認などに利用できます。
また、VAS(Visual Analog Scale)を用いた『EQ VAS』というヴァージョンもあります。
EQ VAS は、垂直方向の線分で「想像しうる最高の健康状態」を100とし、「想像しうる最悪の健康状 態」を0として、対象者が主観で数字を記録します。
なお、対象者本人が回答する自己回答方式と、医療関係者や他の代理者など本人ではない他者が回答する代理人回答方式があるので、幅広く利用可能です。
投稿者
浅田 健吾先生
株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩
平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、令和元年より株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩での勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。