各認知症における症状の特徴 -前頭側頭葉変性症-
前頭側頭葉変性症(frontotemporal lober degeneration:以下、FTLD)では、
前頭葉(役割:感情・意思・計画・運動性言語のコントロール)と側頭葉(役割:聴覚・味覚・判断力・記憶・言語理解のコントロール)の変性・脱落により
精神症状
言語障害
パーキンソニズム
運動ニューロン症状
をはじめとする運動障害が生じやすいとされています。
また、注意の転導性亢進(1つの課題に持続して集中できない)や被影響性の亢進(外的刺激に過剰に反応し模倣行動や言語応答を行う)もみられます。
FTLDは、
『行動障害型前頭側頭型認知症(以下、bvFTD)』
『意味性認知症(以下、SD)』
『進行性非流暢性失語症(以下、PNFA)』
の3つに臨床的分類されており、最も多いサブタイプはbvFTDで、FTDの全症例の約半数を占めると言われています。
bvFTDでは、
『脱抑制・反社会的行動(礼節や社会通念が欠如し、自己本位的な行動が目立つ)』
『意欲や共感性の喪失(作業活動や他者交流などに対する興味や意欲の喪失、他者への共感力の低下)』
『口唇傾向(例:過食、手にしたものを口にしてしまう)』
『常同・強迫行動(頑固、過剰な嗜好、同じ行動の繰り返し、生活変化に対する柔軟性低下)』
が特徴的です。
行動の例としては…
・見知らぬ人に性的・暴力的な接触をする
・他人の物を盗る・破壊する
・買いだめをする
・過食、濃い味付けや甘い物を好むようになる、道に落ちているゴミを口にする
・他人に対して冷たいと思われるような態度をとる
・スケジュールや方法の急な変化に対応できない
などがみられます。
一般的に、初期では運動系の症状はみられませんが、後期にはパーキンソニズムが出現することがあるようです。
SDでは、常同行動や口唇傾向に加え、
『類義失語(意味理解の障害)』
『相貌・物体失認(身近な人・物の識別ができない)』
が生じると言われています。
「一見スムーズに会話しており復唱も可能だが、内容を理解していない」
「誰でも知っているような単語の意味が理解できない」
「よく知る身近な人の顔を見てもわからない」
「私物のはずなのに使い方が分からない」といった行動がみられます。
PNFAは、意味理解は可能ですが、努力的で滞りのみられる発話(発音のしにくさ、吃音、復唱困難、不自然な発音など)、発話時の失文法が症状として特徴的です。
自身の会話能力が低下していることを理解する場合が多く、心理的な落ち込みによる抑うつ・無関心・無気力の進行に注意が必要です。
投稿者
浅田 健吾先生
株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩
平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、令和元年より株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩での勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。