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OT浅田健吾の臨床家ノート 訪問リハ・訪看リハの初回訪問時、チェックポイントについて

今回は、『本人の健康状態・心身機能に関わるリスク』についてお伝えします。 

理学療法・作業療法・言語聴覚療法の対象者は、なんらかの疾患に加えて全身的な合併症のある方が少なくありません。

その為、セラピストは“最新のリハ訓練処方箋(指示書)”の内容に基づいてリハを実施する必要があります。

訓練処方箋の内容に不備や不明な点がある場合は、医師への内容確認を迅速に行い、必要に応じて訓練処方箋の修正を求めましょう。

また、利用者に安全で適切なリハを実施する上でバイタルチェックは欠かせません。

バイタルサインの監視を適宜行う事で治療による悪影響に留意するのですが、その為には“起こり得るアクシデント”がある程度予測されていなければなりません。

“起こり得るアクシデント”の項目は、

① 心停止

② バイタルサインの急激な変調や自覚症状の出現

※強い胸部痛や腹痛、てんかん発作、低血糖発作、意識消失、気分不快、血圧低下、不整脈、

胸背腹部痛、強い関節痛や筋肉痛

③ 転倒・転落・打撲・その他の外傷

④ 接続チューブなどのはずれ

※点滴、人工呼吸器等

⑤ 感染

⑥ 治療機器や福祉用具、家具・家電製品等による熱傷、感電、疼痛、外傷

⑦ 誤嚥

⑧ 利用者や家族同士のトラブルによるアクシデント

※例)施設利用者同士や家族との言い争いや喧嘩等

⑨ 利用者の間違い

※例)A氏の訪問をしていたが、類似した傷病を有するB氏に処方されている内容のリハビリテーションを誤って実施してしまった。

⑩ 徘徊による行方不明 

等が挙げられます。

これら一つ一つの対策を頭の中に叩き込む事が出来れば理想的ではありますが、仮に出来たとしても実際にアクシデント場面に遭遇した際に、終始冷静に対応するスキルは非常に高度なモノとなります。

各利用者で特に起こり得る可能性の高いアクシデントが何かを事前に絞り込んでおくという準備は勿論重要ですが、それに加えて所属先における初動体制の確認が、これらアクシデントへの対策の第1歩として重要となります。

皆さんの所属先では、アクシデント対応の為のマニュアルは整備されていますか?

整備されている場合、そのマニュアル内には「医療事故が発生した際に医療上の最善処置が施される為の指示・連絡系統ならびに報告のルート」「利用者・家族への説明者と説明方法」「事故内容と事実経過の記録項目や方法」「説明時の記録様式」「診療録への記録について」「所属先内での情報共有・周知の方法」は記載されているでしょうか?

アクシデント発生時の連絡系統と、報告書の提出に関する取り決めしか整備されていない事業所・施設が多数だと思います。

アクシデント対策は、事前の予測や事後の行動(「どの段階に到達した時点で収束とするか?」「収束に至るまで、どこで何が成されるべきか?」等)といったように、発生前後にまで目を行き渡らせなければなりません。

アクシデントやインシデント発生時の振り返りにしっかり時間を割き、不十分さや動きにくさを感じた点を炙り出して改善策を講じる事は、その時の人員にマニュアルを適合化させる役割がもたらされる事に加え、アクシデント発生時のシミュレーションにもなりますので非常に有意義な議論になると考えます。

投稿者
浅田 健吾先生
株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、令和元年より株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩での勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。