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認知症で生じ得る主な認知機能障害について

認知症を呈すると、その疾患ごとに様々な症状が生じます。

認知症で障害されやすい主な認知機能には、『注意』『遂行機能』『記憶』『言語』『視空間認知』『行為』『社会的認知』があるとされています。

 『全般性注意障害』

全般性注意とは、「周囲の刺激を受容・選択し、それに対して一貫した行動をするための基盤となる機能」とされています。

認知症には様々なタイプが存在しますが、この全般性注意は原因疾患によらず比較的早期に出現すると言われており、注意の持続・選択性・配分が障害されやすいとされています。

これらの機能が障害されると、複雑なことの理解や記銘、反応速度の低下がみられます。

多数の作業工程を伝えられても理解するまでに時間がかかったり、屋外を歩いていて頻繁につまずいたり周囲環境にぶつかることが多い、作業の失敗や不十分さが目立つといった場合、こうした注意機能の低下を原因の一つとして疑ってよいかもしれません。

こうした症状には、安全に集中して物事に取り組めるよう、作業環境を整えたり、声かけを行うといった援助が有効とされています。 

『遂行機能障害』

遂行機能とは、ある目的を達成するために計画を行い、その計画に沿って実行したことを適宜振り返りつつ、更に進めていく機能です。前頭側頭変性症で多く見られる症状で、段取り良く物事が進められなくなる症状です。

代表的な行動としては…

主体的に行動出来ない:目標や行動の計画を立てることが出来ないので、いつまでたっても行動を開始することが出来ないので、周囲からの具体的な指示が必要となります。時折「やる気がない」「意欲低下」と決めつけられがちですが、決してそうでは無いことを周囲が理解することも必要です。作業手順のメモを用意すると行動しやすくなる場合もあります。

複数の作業を同時に行えない:優先順位を付けたり、効率よく作業を進めるための計画が出来ないので、同時に2つ以上の作業を行うことが難しくなります。例えば、洗濯をしながら部屋の掃除をしたり、複数のおかずを並行して調理することが難しくなります。単純化した作業を順番に行うといったように、作業工程の整理が必要となります。

衝動的・反社会的な行動をとる:客観的に自分自身の行動をとらえることが困難となります。また、人によっては「見た・聞こえたこと」に対して衝動的な行動をとってしまい、結果として反社会的な行動に至ってしまうこともあります。例えば、「必要な商品をお店で見つけたので、カバンに入れて会計を済まさず店を出てしまう」「隣の席の人がおいしそうに食べているお菓子を、自分も食べようと勝手に手をつけてしまう」などといった行動に出てしまうことがあるのです。こうした症状をお持ちの方は個別対応を求められる場面が多くあります。また、情報量が少ない環境を整えることも重要とされています。

 認知症の方は様々な行動・心理症状(BPSD)を取ることがありますが、その背景には中核症状(機能障害)と外部からの情報やご本人の体験との密接な関わりが存在します。

対象者ご本人が有している症状を正しく理解すると、具体的な課題の解決策が検討しやすくなります。

投稿者
浅田 健吾先生
株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、令和元年より株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩での勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。