ブログ詳細

Blog List

OT浅田健吾の臨床家ノート 活動・参加レベルの目標設定の重要性

患者さん・ご利用者さんのリハビリテーションの目標を活動・参加レベルで設定されることがあると思います。

特に回復期や生活期においては、そういった形での目標設定が望ましい・求められる風潮となっています。

では、なぜ活動・参加レベルの目標設定が望ましいのでしょうか?

単に制度的な意味合いなのでしょうか?

 厚生労働省の資料に記載されている「リハビリテーションの展開と3つのアプローチ」では、リハでアプローチすべき部分の割合が、発症・増悪後の時間経過とともに心身機能から活動(ADLIADL)や参加(役割の創出・社会参加の実現)へと徐々にシフトしていくイメージ図を示しています(下図)。


図 心身機能・活動・参加(平成28年版厚生労働白書-人口高齢化を乗り越える社会モデルを考える-より引用)

 

これは、急性期は心身機能、回復期はADL、生活期は社会参加、と切り離して考えるイメージではなく、「急性期でも回復後の活動・参加を念頭に置いたアプローチを」「回復期・生活期でも、心身機能の維持・向上につながる活動・参加の取り扱い方を」というイメージだと認識しています。

また、これまでの記事でもお伝えしてきましたが「回復の限界を十分考慮せず、心身機能へのアプローチによるリハビリテーションを漫然と提供し続けた場合、活動、参加へのアプローチによるリハビリテーションへ展開する機を逸し、結果として患者の社会復帰を妨げてしまう可能性がある」とも記載されており、機能面への固執から活動・参加に重点を置くことの必要性が説かれています。

さらに、患者が重要としている生活目標をリハビリテーションに取り入れると、心理機能や動機づけであったり、不安軽減や治療への参加に効果があったという研究結果もあります。
引用
Short-term effects of goal-setting focusing on the life goal concept on subjective well-being and treatment engagement in subacute inpatients: a quasi-randomized controlled trial
Tatsuya Ogawa. Kyohei Omon.Tomohisa Yuda.Clinical Rehabilitation.2016 

以上から、活動・参加レベルの目標設定には
ADL自立や社会参加の機会を失い、機能回復に固執する事を防ぐ」
「リハビリテーションに取り組むにあたっての不安を軽減する」
「リハビリテーションへ主体的に関わるきっかけを作る」
といった機能が備わる可能性が高いと考えられます。

日々の臨床で目標設定に悩まれたら、患者さん・ご利用者さんに「どういった生活行為が重要か」を教えてもらってみてください。

投稿者
浅田 健吾先生
株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、令和元年より株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩での勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。