ブログ詳細

Blog List

PT楠貴光の臨床家ノート 肩甲骨の機能を運動学的に考える その17

今回は、関節可動域検査における肩関節屈曲角度の測定について考えてみます。

肩関節屈曲の関節可動域検査について、日本リハビリテーション医学会の関節可動域測定では、以下のように規定されています。

計測肢位 : 座位または立位姿勢

基本軸 : 肩峰を通る床への垂直線

移動軸 : 上腕骨

注意点 : 前腕は中間位とする。

体幹は動かないように固定する。

脊柱が前後屈しないように注意する。

これらの規定に基づき、他動運動で、肩関節を屈曲し、最大可動域を測定します。

このとき、ゴニオメーターを用いて、5°刻みで角度を数値し、客観的に評価することに加え、最終可動域でのエンドフィールを評価することで制限因子を予測することが、一般的な関節可動域検査の方法です。

しかし、検査者や誘導方法の違いによって、運動の質が異なり、最大可動域が減少することや、場合によっては痛みを伴うようなことを経験するのではないでしょうか。

なぜ、このようなことが生じるのか、考える必要があります。

単に上腕骨が、空間上で屈曲可能な角度を計測するだけでは不十分であり、正常の関節運動を充分に理解して実施する必要があります。

・肩関節屈曲運動における肩甲上腕関節での肩甲骨関節窩と上腕骨頭は、どのような関係性で運動する?

・肩関節屈曲時には、肩甲骨運動は、どの関節の運動によって構成され、どの時期にどのように動くのか?

このような基礎的な知識を思い返し、少し意識して、他動運動をおこなうだけでも、運動の質が異なり、正確に最大可動域を計測することができると考えます。

また、関節可動域練習についても、同様の思考をもって実施し、介入ごとに評価することが重要と考えます。

 

楠 貴光先生

園部病院リハビリテーション科
神戸リハビリテーション福祉専門学校理学療法学科 臨床講師
上肢機能に関する学会・論文発表が多数
臨床と研究を組み合わせて高いリハビリテーション効果を出している若手臨床家