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OT浅田健吾の臨床家ノート 食事の摂取量増加をどのように図るか

高齢者で、食事の摂取量がなかなか増えずにお困りの方は少なくないと思います。

私も臨床場面で多く目にし、その対応に苦慮することがあります。

今回は、摂取量増加を目指す上で私の実践経験を少しご紹介させて頂きます。 

ケースは、認知症を呈し、既往に脳梗塞がある高齢者の方です。

介入した時点では食事の摂取量が平均13割程度で、エンシュアを処方されていました。

元々間食が非常に多く、エンシュアを「美味しい」といって好んで飲めるくらい甘いものはお好きで、昔から外食時以外は食事をあまり多く召し上がっておられなかったそうです。

判断を迫られたり洞察が必要な事に対しては不安の感情が溢れやすいのか、表情が瞬く間に曇り、「やめときます」「結構です」と返答されます。一方で他者が促してくれると戸惑う様子を見せず物事に取り組んでくださる傾向でした。

認知機能は全般的に低下しているものの、視覚情報からの状況判断は比較的できており、注意の散漫さもそれほど目立っておりませんでした。

以上から、

  • 食事の座席をセッティング:一緒に食事をとっている他者が視界に入りやすい配置
  • テーブルのセッティング:自身の食事(器の中身も)が視界に入りやすい高さ
  • 問いかけではなく、促す:「よかったらどうですか?」「食べますか?」ではなく、「どうぞ」「お待たせしました。さぁ、食べましょう!!」
  • 本人の口に合うものから先に食べてもらう:嫌いなもの・苦手なものを食べて「もう食べたくない」のモードにしてしまわない
  • 食事が進まないときはエンシュア:本人が嫌がっておらず、むしろ好んで飲めるのであれば一概にマイナスに捉えない

 これらをスタッフやご家族にお伝えしたところ、毎食ではありませんが8割程度を摂取できる場面が多くなりました。

 上記は、勿論どの方にでも当てはまることではありません。しかし、その方の運動機能や摂食嚥下機能に加えて、『食事のとらえ方:その方にとっての食事の位置づけ、価値観、嗜好など』や『食事のとり方:食べ方、集中の度合い、受け入れやすい促され方、元々の摂取量、状況判断しやすい環境の在り方、個食派?集団派?など』といったように、“その方ならではの情報”が非常に重要になると考えています。

また、一般的に適正とされている分量を押し付けるような食事のすすめ方は、かえって本人に苦手意識や不安を植え付け、本人から食事を遠ざけてしまう可能性があります。ADLには価値観や習慣が密接に絡みますので、綿密な段階付けとともに、ある程度の期間を設ける必要があることを理解しておきましょう。

 

投稿者
浅田 健吾先生
イーリハ東大阪訪問看護ステーション
セミナー講師

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、平成29年より(株)コンパス イーリハ東大阪訪問看護ステーションでの勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。