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OT浅田健吾の臨床家ノート “食事”という活動・行為について③

今回は箸操作に触れてみます。 

箸操作にアプローチする際は、“固定側”と“操作側(はさむ、つまむ、切る等)”の手指の異なった役割を理解しておかねばなりません。 

固定側は、尺側3指が担います。環指は屈曲位でありながらも伸展を維持する事で、中指との間で固定箸を保持するのです。これは、操作箸を動かしている間も同様の働きをし続ける必要があります。 

一方で操作側は、書字動作に非常によく似た動きが求められます。 

ですので、訓練としては“書字課題”ある程度有効にもなります。具体的には、固定側手部を机につけた状態のまま操作側で書字動作を行うという感じです。 

この時の肩や腕の動きですが、スプーン操作に比べると箸では実は小さな動きとなります。

食物を口腔まで運ぶ際、スプーンは先端やつぼ(液体などを溜める、くぼんだ部分)を水平に保つ必要がありますが、箸では食物をつまみ続ける事が優先されるので、手指の力加減の微細は調整を行い続ける上で、肩の粗大な動きはむしろ避けるべきなのです。

しかし、肩の動きが不要という事ではありません。

片麻痺患者では、麻痺側の肩甲帯を後方に引き込んだ状態になりやすい為、自己身体より前方での上肢末梢操作は制限されます。

ですので、このような肩甲帯の過剰な固定パターンに対しては何らかのアプローチ・対策が必要ではあります。 

ちなみに上記のような動きは多くの場合、自助具でのカヴァーが十分可能と考えます。

箸の自助具使用については、安価な事もあり自主トレーニングを兼ねて積極的に使用してよいと考えますが、日常の食事と外食時などの“楽しみたい・味わいたい”食事の際で、普通の箸と使い分ける事を提案すると、より丁寧かと思います。

 

投稿者
浅田 健吾先生
イーリハ東大阪訪問看護ステーション
セミナー講師

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、平成29年より(株)コンパス イーリハ東大阪訪問看護ステーションでの勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。