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OT浅田健吾の臨床家ノート “食事”という活動・行為について②

身障・発達分野で“食事動作”の心身機能にアプローチを行う際は、“摂食・嚥下の5期”で考えた場合、先行期・口腔準備期・口腔期・咽頭期において、筋骨格系や中枢神経系の働き、認知等に着目しての姿勢制御・随意運動のような身体反応(機能)改善、ポジショニング、代償方法の提案等を行う事が多いと思います。

 ちなみに“食事”に限った話ではありませんが、十分なアセスメントをもとに、そのセラピーが“どの段階”の“どのような運動・身体反応”を期待してアプローチしているのかが明確にされていないと、意図してよい結果を招くことは難しいでしょう。

それらを念頭に置かずして「感覚が~」「筋緊張が~」「筋力が~」と言い続けるような事は、当てずっぽうにも程があります。

なので、評価の段階ではまず『“アプローチする活動(例:食事)の一連の流れ”を分析』します。

その上で『エラーを起こしている“段階”を特定』し、『その“段階”を遂行するにあたって必要な機能・動きの絞り込み(※前後の段階との繋がりも考慮しましょう)』を行います。

ここまで行けば、治療プランはかなり絞られるはずです。 

話を“食事”に戻します。

作業療法士や理学療法士が特にアプローチする機会の多いのが先行期でしょう。

先行期とは、視覚・嗅覚・触覚等の感覚情報をもとにして対象である食べ物を認知し、口腔へと運ぶ時期です。

ここでは、食べ物を口腔へ取り込む為に必要な運動が行われますので、その運動を行うにあたっては、やはり機能的な姿勢を獲得するという点が重要項目の1つとして外せません。

どのように機能的であるべきかと言うと、『視覚情報を取り入れやすい(見渡せる、のぞき込める等)』『対象に向かってリーチしやすい』『上肢を空間で保持したまま、末梢測(手関節や手指)の細やかな運動(物品操作)が行える』『上肢と頭頚部・口が協調できる(口で食べ物を迎えに行ける)』『繰り返される上肢の運動で生じる姿勢のズレを修正できる』などが挙げられます。

これら上記に対してアプローチを行う場合、『手で食べ物を皿から口へ移す』という点だけで捉えていると、仮に動作自体が行えるようになったとしても、その食事は非常に“義務的”になってしまう可能性が高いと考えます。“味わう”という要素が抜け落ちているからです。 

食べ物自体の味はもちろんの事、見栄えや雰囲気、香り、質感、温度などの五感で得られる外部情報と、本人の嗜好や記憶といった内面にインプットされている情報との照合過程に焦点を当てる事で、本人が自身にとってより良い情報を取り込もうとする、能動的かつ自律的な身体反応の誘発が期待できます。

例えば、箸やスプーン・フォークの操作といった手先の動きは、食べ物の質感に合わせて細やかに調整されるものですから食べ物の重量や粘性、抵抗感などといった“運動の手がかり”になる感覚情報を強調するという事も、テクニックの1つになると考えます。

投稿者
浅田 健吾先生
イーリハ東大阪訪問看護ステーション
セミナー講師

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、平成29年より(株)コンパス イーリハ東大阪訪問看護ステーションでの勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。