OT浅田健吾の臨床家ノート 食事という活動・行為について
療法士として、“食事”に対するアプローチを行う機会は多々あると思います。
私自身は、病院で勤務している時にその機会が多くありました。
アプローチの切り口は、上肢機能や姿勢が多いでしょうか。高次脳機能障害を有する方であれば、環境の調整も行う事がありますね。
言語聴覚士の方は摂食・嚥下機能の改善や適切な食形態の評価・調整等でオーダーされるかと思います。
栄養摂取量に対する運動負荷量の調整等を、食事に繋げて考えている方もいらっしゃる事でしょう。
以上のことも含めて、“食事”は、アプローチの切り口が非常に多岐に渡る活動・行為であるという印象を受けています。
そもそも食事は、大きく2つの側面を持つと考えます。
まず1つは、生命維持です。栄養・水分を身体に取り込む手段としての、動物的な側面です。ここでは、摂食・嚥下機能やスキル(上肢機能や物品操作能力等)への着目が重要になります。
もう1つは、味わいや楽しみ、コミュニケーションの手段としての側面です。ここでは、社会的・文化的な背景や学習、嗜好等も深く関与してくると考えます。入院患者さんからは「(食事くらいしか)楽しみがないねん」といった声も良く聞かれます。
私個人としては、後者(味わいや楽しみ、コミュニケーションの手段)についての視点を持ってアプローチするという事が、セラピーの質に深みを持たせる上で肝になってくると考えています。
なぜか?
大好物な物を食べる時と、苦手な物を食べる時の姿勢や手の動きの違い。
上肢しか身動きが取れず、姿勢(体幹)をガチガチに固められた状態での食器操作や摂食・嚥下機能。
箸やスプーンの持ち方・扱い方の個人差。
自宅と病院食とのメニューの違い。
心理状態の影響。
可動域や筋力、握力、ピンチ力といった基本的な身体機能に加え、
繊細な上肢・手指の動きや、それに協調した頸部・体幹の姿勢・運動制御等を考慮したアプローチが行われる場合、上記は無視できない要素となるはずなのです。
食事とは、個人の嗜好や癖・習慣等によって内容が大きく左右される、個別性の高い活動・行為なのです。
また、『自ら(自己身体)を対象物(食物)に向かわせる』『身体より外部の情報を内部に取り込む』という特徴を持った活動・行為でもあります。
以上を前提として、次回以降はしばらく“食事”に焦点をあてて投稿させて頂こうと思います。
投稿者
浅田 健吾先生
イーリハ東大阪訪問看護ステーション
平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、平成29年より(株)コンパス イーリハ東大阪訪問看護ステーションでの勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。