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OT浅田健吾の臨床家ノート 更衣動作について その5

感覚入力を用いた治療を実践する場合もあるかと思いますが、 

どの部位に、

どの方向へ、

どのような感覚情報を、

どのようにして

入力するかを緻密に練る必要があります。 

またそれに加え、

対象者に対してセラピストが、どのような身体反応を期待しているか?

が特に重要となります。

これらは更衣動作以外のどのような治療にも共通することなのですが、意外と現場では考慮されていないケースが多い印象です。

 例えば『片麻痺患者の袖通し』を例にした場合ですと、

“手関節部あたりから肩へ向けて擦る”

という課題を提供する場合がありますが、とりあえず擦ればいいのでしょうか?

まず前提として、非麻痺手による末梢側から中枢側への運動に対しての麻痺側上肢のリーチ(肩屈曲や肘伸展など)が期待する身体反応であるとすれば、前腕や上腕をただひたすらに擦らせると、かえってリーチを阻害し、上肢・上肢帯の引き込みという誤った身体反応を誘発する可能性があります。

 袖通しにおける上肢リーチを狙うのであれば、

例えば肘関節部を中枢側に向かって擦るという課題を選択した場合、

『肘関節部へ入力されるの感覚情報の強調』『入力されるべき部位の選定・誘導』『リーチのアシスト(ハンドリング)』等が療法士に求められる役割であり、『入力される感覚情報の変化に合わせた自律的な上肢リーチ(肩や肘、前腕のどのような動きを期待するかが細かくあればなお良いかと)』が期待すべき身体反応であったりすると思います。

何でも感覚入力にはなりますが、だからこそ『ご本人にとって必要な部位・程度の感覚情報が何なのか』については入念に検討する必要があります。 

更衣動作では、身体接触面上における衣服の移動=感覚情報の移動や張り(部位や圧の変化)が、身体反応を行う上での重要な頼りになると考える事もできるはずです。

投稿者
浅田 健吾先生
イーリハ東大阪訪問看護ステーション
セミナー講師

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、平成29年より(株)コンパス イーリハ東大阪訪問看護ステーションでの勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。