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PT楠貴光の臨床家ノート 肩甲骨の機能を運動学的に考える その3

今回は、胸鎖関節について鎖骨の形状を踏まえて、その運動をおさらいしてみます。

胸鎖関節では、

・挙上/下制

・前突/後退

・前方/後方への長軸回旋

といった3つの軸で運動が可能であり、胸鎖関節の遠位に位置する鎖骨を動かします。

ここで一度、鎖骨の形状に着目してみましょう。

鎖骨の見え方は、見る角度によって異なり、正面からは真っ直ぐな形をしているように見えます。

しかし、鎖骨を真上から見ると、近位部では一度前方に弯曲し、その後、後方に弯曲することでS字型をしていることがわかります。

この鎖骨の近位端が胸鎖関節であり、遠位端は肩鎖関節として肩甲骨と連結しています。

そのため胸鎖関節の運動は、鎖骨を介して肩甲胸郭関節上で肩甲骨を動かします。

ここで注意が必要なのは、鎖骨の遠位端に対して肩甲骨が真横に付いているのではないということです。

特に胸鎖関節での前方/後方への長軸回旋では、単に肩甲骨が前傾や後傾方向に動くだけではありません。

胸鎖関節の運動に伴う肩甲骨の動きは、S字型をしている鎖骨の形状や、鎖骨と肩甲骨が接する関節面の位置や向きを踏まえて考えていく必要があります。

では、胸鎖関節を軸として鎖骨が長軸回旋すると、どのように肩甲骨は動くでしょうか?

『胸鎖関節で前方へ長軸回旋すると肩甲骨は前傾および下方回旋します。』

一方で、『胸鎖関節で後方へ長軸回旋すると肩甲骨は後傾および上方回旋します。』

上肢挙上時に肩甲胸郭関節で肩甲骨の後傾、上方回旋するためには、この胸鎖関節での後方への長軸回旋運動が非常に重要な運動となります。

このように胸鎖関節の運動と鎖骨の形状、その関係性を考えるだけでも、肩甲骨機能の評価、治療における視点が変わってくると考えられます。

投稿者
楠 貴光先生

六地蔵総合病院 リハビリテーション科
上肢機能に関する学会・論文発表が多数
臨床と研究を組み合わせて高いリハビリテーション効果を出している若手臨床家