姿勢変換型車いすの臨床評価
今回は姿勢変換型の車いすに関してです。
以前のブログで姿勢変換型の車いすは選定のスクリーニングにおいては、Hoffer座位能力分類の3の状態の方に対して使用していく車いすとして紹介しました。
具体的に姿勢変換型の車椅子とはどのようなものを指すのでしょうか。
主には、リクライニング車いす、ティルトリクライニング車椅子などを指します。
リクライニングは背もたれが倒れる機構(新幹線についているのはリクライニングです)、ティルトは座面が後方へ倒れる機構を指します。
これらの機構はそれぞれ一つずつ車いすの機能としてついているものもあれば、どちらもついているものもあります。
一般的には、リクライニング車いすの方が安価で、病院や施設などではよくみかけることがあります。
そんなリクライニング車いすですが、課題としてあげられることが多いのが操作による前すべりです。
リクライニング車いすの背もたれを倒した状態は、座面上で前に臀部を滑らせてしまう力が大きく働きます。
実際に滑り出さなくてもお尻には非常に大きなずれ力(摩擦力)が加わっており、褥瘡などの原因となります。安易に姿勢の安定のため、リクライニング車いすを使用すると前すべりの感覚から、安定感を得ることができないということにつながります。
リクライニング車いす上でアームサポートを握りこんで座っておられる方などを見かけることがありますが、そのような方はもしかするとリクライニング車いすの背もたれを倒したことによる前すべりに対して、なんとか耐えようとされている結果かもしれません。
一般的にリクライニング車いすには上記のような課題が挙げられることが多いですが、このほか、リクライニングの操作時にもずれが生じます。
これは股関節と、リクライニングの軸がずれているために起こることです。
これを生じさせないようにするには、リクライニング機構の車いすのみでは難しいです。
ティルトリクライニング車いすであれば、介助操作の順番でこれを回避できます。
ティルトリクライニング車いすの場合は、倒す際は、ティルト→リクライニングの順番、起こす際はリクライニング→ティルトの順番で操作する必要があります。
もしご自身で座って、経験する機会があればぜひ試してみてください。
違いをすぐに理解できます。
よい用具を使用しても使い方が間違っていれば、効果は発揮できないので、ぜひ注意して操作していただければよいと思います。
波野優貴先生
理学療法士
福祉用具プランナー
シーティングコンサルタント
勤務先
◯株式会社SOMPOケアネクスト
地域包括ケア推進部生活リハビリ推進グループ
◯大阪府立大学 非常勤講師
福祉用具論の一部を担当