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OT浅田健吾の臨床家ノート 排便時の姿勢について

便座上での座位保持が可能であっても、排便が困難となっている方は多数いらっしゃると思います。

今回は、排便時の座位姿勢に触れてみます。 

腹圧をかけやすくする為の姿勢は、皆さんご存知の通りロダンの『考える人』が有名ですね。

高野正太氏(大腸肛門病センター高野病院)は、通常の座位姿勢でバリウムペーストを排便できなかった対象者22人に『考える人』の座位姿勢を取らせたところ、11人の対象者は完全に排泄する事が出来たとの報告を2016年にしています。

肛門直腸角を鈍角にする事で、腸内での便の通りをスムーズにする事を目的とした姿勢ですが、これ程に有効なのですね。 

さて、排便を促す為の要素はいくつかあります。 

前述した“姿勢”は肛門直腸角以外に、座位を取る事で重力を用いた便の輸送も狙っています。 

また、『食事』も排便に大きく影響します。

便の形状への影響は勿論ありますが、大腸の蠕動運動も促しています。

ですから、水分のみではなく固形の食事を規則正しく摂取する事は、排便のリズム形成にも影響するのです。 

精神面については、やはりリラックスできておらず緊張した状態では便秘になりやすい為、『(便を)出さなければ』と義務的・脅迫的な状態では排便が阻害されやすいと言えます。

また、トイレまでの移動や下衣操作等があまりに努力過ぎると交感神経優位となり、やはり排便は阻害されるかもしれません。

安全面だけでなく、スムーズな排便を誘発する為にも、各主動作は余裕を持って行えるべきでしょう。 

寝たきりの利用者は動ける利用者に比べて、45倍の高い率で便秘が発症しているという報告があり、寝たきり高齢者の80%はなんらかの形態で下剤が投与され、50%の方は下剤がなければ排便できない状態にあるともいわれています。 

服薬のみではなく『姿勢』『食事』『精神面』や運動等といった切り口からの排便アプローチは、療法士ならではと言えると考えます。

 

投稿者
浅田 健吾先生
イーリハ東大阪訪問看護ステーション
セミナー講師

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、平成29年より(株)コンパス イーリハ東大阪訪問看護ステーションでの勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。