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PT楠貴光の臨床家ノート 肩甲骨の機能を運動学的に考える その20 僧帽筋の効果的なストレッチング

肩甲骨の内転作用を有する筋には、僧帽筋上部・中部・下部線維、菱形筋が挙げられます。

今回は、僧帽筋の効果的なストレッチングの方法について

まず、僧帽筋について、解剖学の知識を整理してみると、

僧帽筋の起始部は、外後頭隆起、項靭帯、第7頸椎および第1~12頸椎の棘突起であり、停止部は鎖骨外側1/3、肩峰、肩甲棘です。

そして、各線維の走行に従って

外側下方にむかって走行する線維を僧帽筋の上部線維、

水平方向にむかって走行する線維を僧帽筋の中部線維、

外側上方にむかって走行する線維を僧帽筋の下部線維として、分けられます。

触診する部位として

僧帽筋の上部線維は、第7頸椎の外側下方2cmあたりの部位、

僧帽筋の中部線維は、肩甲棘内側と第2胸椎を結んだ線上の部位、

僧帽筋の下部線維は、肩甲棘から内側下方に5cmほど指を移動させた部位です。

これらの部位を指標として、筋線維ごとの筋収縮を触知することができます。

このとき、各筋線維の走行を意識する必要があります。

肩甲骨に対する僧帽筋の各線維は

僧帽筋の上部線維が、挙上、内転、上方回旋作用、

僧帽筋の中部線維が、内転、上方回旋作用、

僧帽筋の下部線維が、下制、内転、上方回旋作用を有します。

では、これらの起始部/停止部、触診部位、肩甲骨に対する作用を踏まえ、僧帽筋のストレッチングの方法について考えてみたいと思います。

基本的に筋の作用とは、反対方向への運動を他動的に誘導することで、筋には伸長負荷が加わり、ストレッチングとなります。

例えば、肩甲骨を外転方向(脊柱から離れる方向)へ誘導すると、肩甲骨の内側に位置する筋は、伸長されます。

このとき、肩甲骨の外転方向の誘導に加え、下方回旋を誘導することで、肩甲骨の内転、上方回旋作用を有する僧帽筋には、全体的に伸長負荷が加わり、ストレッチングされます。

僧帽筋のなかでも線維分けとしては、

僧帽筋の上部線維は、挙上、内転、上方回旋作用を有することから、外転、下方回旋に加え、下制方向に誘導することで、さらに伸長負荷が加わります。

また、僧帽筋の下部線維は、下制、内転、上方回旋作用を有することから、外転、下方回旋に加え、挙上方向に誘導することで、さらに伸長負荷が加わります。

このように線維ごとの作用の違いを整理し、実施することで、効果的なアプローチが可能となると考えられます。

加えて、ストレッチング中に対象となる筋線維を触診し、しっかりと伸長されているのかの確認することや、可動域の評価だけではなく、治療前後の効果を触診でも確認することが重要と考えます。

 

楠 貴光先生

園部病院リハビリテーション科
神戸リハビリテーション福祉専門学校理学療法学科 臨床講師
上肢機能に関する学会・論文発表が多数
臨床と研究を組み合わせて高いリハビリテーション効果を出している若手臨床家