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リハビリテーションの場面における合意形成:「擦り合わせ」について

『会話コミュニケーションによる相互信頼感形成の共関心モデル:片桐 恭弘・石崎 雅人・伝 康晴・高梨 克也・榎本 美香・岡田 将吾, Cognitive Studies, 22(1), 97-109. (March 2015)』では、合意形成や信頼関係の構築を目的とした会話を進める際には、「特定の論点の下での関心擦り合わせと提案交換の二つの過程に分けてとらえることができる.」と説明されています。 

「関心擦り合わせ」とは
合意形成を図ろうとする双方において、各自の関心・考えを明示し合うとともに、相手の関心・考えに賛同するか否かを表明することを意味します。

単純な内容(例:トイレ内に手すりを回収するかしないか)であれば、このまま提案交換へと進みますが、内容が複雑化(例:どういった方法で旅行できるよう支援を進めるか)する程、そもそもの論点自体について合意形成を図る必要が生じます。

テーマに対するお互いの考え方を説明し合う段階と考えられるでしょう。

 「提案擦り合わせ」とは
前段階で擦りあわされた「関心」に基づいた具体的提案を提示し、合意内容の交渉に入る段階として示されています。

リハの場面であれば、目標設定や目標達成のための手段・工程を話し合う段階と考えてよいでしょう。

 関心が十分に擦り合わされていないまま提案に移行してしまうと、互いが納得できる結論に辿り着けませんので、その場合は再度「関心擦り合わせ」からやり直すこととなります。

論点が複数取り上げられる場合には論点ごとに関心と提案の擦り合わせを行い、それらを並列や階層といったネットワークで結びつけ、合意の全体像を互いにイメージする必要が生じます。

しかし、例えば高齢者や傷病による症状を呈した対象者を相手に複雑な概念図を示しても理解は得られにくいと考えますので、論点が複数存在する場合は優先順位をつけて1つ1つ合意・解決を図る方がスムーズに介入を進めることができるような印象を持っています。

 (引用)

※1 「会話コミュニケーションによる相互信頼感形成の共関心モデル」

片桐 恭弘・石崎 雅人・伝 康晴・高梨 克也・榎本 美香・岡田 将吾

Cognitive Studies, 22(1), 97-109. (March 2015)

投稿者
浅田 健吾先生
株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、令和元年より株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩での勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。