車いすシーティングを実践する上で、注意すべき点
今回は、車いすシーティングを実践する上で、注意すべき点に関してお伝えできればと思います。
車椅子シーティングを実践する上で、まず注意すべき点は、「見えていることの対処」にならないようにするという点です。
これはいま車いすを使用されている方の見えている姿勢に対して対処するようなアプローチに注意するということです。
例を下記に示します。
例)
・前すべりされる方に対する座面のすべり止めシート
・側方へ傾かれれる方に対する、側方サポート
これらのアプローチはごくたまにうまくいくこともありますが、多くはすぐに課題の再発につながったり、別の問題を引き起こす原因となってしまったりします。
図 前滑りをする事例 転載禁止
(引用元 リハビリテーション職種の在宅リハビリ・ケア)
前すべりされる方に対するすべり止めは、褥瘡はもちろんのこと、すべりすわりで姿勢を安定させていた方にとっては姿勢崩れを助長することになったり、それが食事時に起これば誤嚥につながる可能性もあります。
側方へ傾かれる方に対する側方サポートは、サポートを乗り越えてさらなる傾きを助長することもあります。
このように見えていることへの対処として、実施されたシーティングのアプローチには多くの問題があります。
シーティングを実践する上では、このように見えていることへの対処とならないようにすることが重要です。
ではどのようにすればよいのでしょう?
これは通常の理学療法、作業療法などのアプローチと同様、評価を行い、要因を分析してからアプローチを検討するということです。
歩行が不安定である方に対して、その歩行観察のみから筋力トレーニングなどアプローチを実践することはあまりありません。
観察から分析、その他の姿勢や動作の分析、そして、徒手的な操作を加えた時の反応を観察したり、筋力や、関節可動域評価をしたりした結果として、優先順位も含めたアプローチが決定すると思います。
シーティングも同様に、なぜその姿勢となられているのかを、評価し、評価結果から車いすの調整や、クッションの挿入などアプローチを検討していきます。
車いす上で発生している課題に対しては、車椅子上での評価、臥位での評価、座位での評価を行うことが多いです。
車椅子の選定、調整を実施される際には、見えていることへの対処ではなく、評価による結果としてアプローチを検討すると、違ったアプローチとなり、よい結果を生みやすくなると思います。
投稿者
波野優貴先生
理学療法士
福祉用具プランナー
シーティングコンサルタント
勤務先
◯株式会社SOMPOケアネクスト
地域包括ケア推進部生活リハビリ推進グループ
◯大阪府立大学 非常勤講師
福祉用具論の一部を担当