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認知症の疑われる対象者に対して、療法士ができること

臨床場面では、認知症と診断されていなくても認知症が疑われる対象者と関わる機会は少なくないでしょう。

そういった際、場合によってはご本人やご家族に受診を促すこともあるかと思いますが、ただ促すだけでいいのでしょうか?

ご本人・ご家族によっては「なんだかよくわからないが、リハビリの人が行っておけと言うから…」という旨を医師に訴え、「しばらく様子をみて、何かあったらまた来てください」との回答のみを得るというケースもあるのではないでしょうか?

こうしたケースは、例えばBPSDが顕著化して服薬による対処が求められる状況になっても「結局、様子を見ろと言われるだけだから…」といったように、必要な受診を先送りにしてしまうことに繋がる可能性もあります。

 では、どうした促し方が良いのでしょうか?

筆者は、『医師が診断を行う上で役立つであろう情報を伝達する』ことが重要だと考えます。

 認知症診療ガイドラインには『問診は患者本人と家族・介護者それぞれに対して行う。

患者本人に対する問診から、記憶、言語、思考などの認知機能、病識の程度、心理症状などを推察できる。

家族に対しては、具体的な症状とその経過を尋ね、日常生活で何が問題になっているのかも明らかにする。

患者の利き手、教育歴、職業、趣味、家庭環境、喫煙・飲酒歴などの生活歴も含めて聞き取り、病前能力の推定、危険因子の抽出、BPSD発現の機序の考察などに役立てる。』と記載されています。

上記のように、問診では、どういった中核症状・BPSDがあり、その時点で有している認知機能の程度を推察することが示されています。

このため、普段の臨床の中で実施した機能検査(HDS-RMMSEなど)の結果や、各症状がいつ頃から確認されて、どの程度の期間で現在に至ったのかを簡単に時系列で書面化したものを、ご家族に持参してもらっても良いでしょう。

しかし、こうした中核症状よりももっと詳細に伝達すべき情報は、BPSDの状況です。

医師は可能な限り心理・行動の状況を把握しようとされますが、問診で得られる情報にはやはり限界があります。

さらにご家族も、何をどのように伝えるべきか分からないといった方が大多数です。

認知機能の低下が起因して生じている生活場面における問題点を明らかにし、それらがどういった時に発現しやすいか。

そうした症状で、ご家族がどの程度の介護負担感を感じているか。

そういった内容を、可能な限りわかりやすい言葉で表現し、診察室の中では知り得ない情報を伝達することが、医師による診断や処方を補助することにも繋がります。

 対象者の生活に密着し、その中で生じている課題と原因を分析する技術に長けた療法士だからこそ成せる支援です。是非、実践なさってください。

投稿者
浅田 健吾先生
株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩

平成21年に関西医療技術専門学校を卒業し、作業療法士の免許取得する。
回復期・維持期の病院勤務を経て、令和元年より株式会社colors of life 訪問看護ステーション彩での勤務を開始する。
在宅におけるリハビリテーション業務に従事しながら、学会発表や同職種連携についての研究等も積極的に行っている。
大阪府作業療法士会では、地域局 中河内ブロック長や地域包括ケア委員を担当しており、東大阪市PT.OT.ST連絡協議会の理事も務めている。
平成30年からは、大阪府某市における自立支援型地域ケア会議に助言者として参加している。